迷走中

膝を壊したことをきっかけに、サッカー選手になれないという現実を受け入れ始めた。

気づいていなかったわけではない。

もともとすごいプレーヤーでなかったし、実績も全然なかったから。

ただ、諦めの悪い人間だったから受け入れないようにしていた。


そもそもなぜサッカー選手になりたかったのか?

サッカー選手ってなんだ?

Jリーガーのこと?

それとも給料が発生していればどこでもいいの?

ヨーロッパなの?


こんなことを僕に問うてくれた人のおかげで、俺はサッカー選手になりたかったんじゃなくて、ただサッカーが大好きで、大好きなもので誰にも負けたくなくて、大好きなものをずっと続けていたかっただけだったんだと腑に落ちた。

でもその瞬間、今まで目指していたものがすっと消えてしまい、急に世界がモノクロになったように感じた。

所属していたチームを離れ、コーチを辞め、サッカーから距離を置いた。


本当にサッカーが大好きなのか、試してみたかったんだ。

本当にないといけないものだったのか?


気づけば5歳の頃からずっとサッカーボールと一緒で、遊ぶといったらほぼサッカー。

ディズニーランドに行ったことがない大学生なんて周りにはいなかった。

ショッピングやカラオケなんてサッカーと比べ物にならなかった。

サッカーをしている時が一番楽しかった。

だからサッカーばかりしていた。

ストイックだねなんて言われたこともあったけど、そんな自覚は全くない。

好きだからやれていただけ。俺は全然、禁欲的な性格じゃない。


それから僕がやったのは就職活動。

ただ単に、世の中にどんな仕事があるのかを知るための勉強だった。

そして社会は今の自分をどう評価するのか知りたかった。


就活はめちゃくちゃ面白かった。

家から車で30分の場所に家庭用換気扇全国シェア1位の会社があることを知ったり、

ネジだけを作っている会社があることを知ったり、大手広告会社、電機メーカー、テーマパーク、スポーツイベント会社、旅行代理店、ガス会社、人事派遣、アパレル、システムエンジニア、銀行、、、

少しでも興味のあるものはなんでも行った。


いわゆる勉強をしてこなかった僕は筆記試験で大体落ちたけど、

面接で色々な人と話せたこともよかった。

社長と話せる機会もあるなんて最高だ。


運よくひとつだけ内定ももらうことができた。

大手ではないけど東証一部上場の企業だった。

むしろ大手じゃないところがいいと思った。挑戦的で、勝気な感じが面白かった。


でも内定を取ってレールの上に乗った瞬間に、気づいてしまった。


「俺はサッカーと生きていきたい」


親にも周りにも反対されたけど、勝手に断りの電話を入れて、退路を切ってしまった。


それからは色々大変だったけど、今も生きている。

意外とレールを外れても普通な自分は変わらなかった。


それから1年半が経った。

まだまだ人生迷走中。

でもやっと、自分で歩き始めた気がしている。

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